弁士
旅から旅の渡り鳥、五つの時かに別れた産みの母を尋ねて27年
江州(ごうしゅう)番場から江戸の街へと辿り着く忠太郎は・・・・。
自分の母の消息を見知らぬ人に聞くのだった。
やっと母らしい人が、この水熊横丁の料理茶屋の女将だとしった忠太郎は。
一方ここの女将は、娘のお登世の許嫁の所に使いをやるのだった。
そこに忠太郎が尋ねて来た。
女将は自分の子の忠太郎は九つの時に死んだと聞いている。
お前は銭貰いに来たゆすりだろ!
お金には困っておりません。
顔の知らねえ母の為に、この百両は抱いて温めて来たんでござんす。
もしやこの男が本当の産みの子の忠太郎ではと思ったが、
今居る娘の可愛さに冷たく追い返すのだった。
それじゃあっしは忠太郎じゃねぇんでござんすか?
「そうだよ、さっさとお帰り!」
ようやく巡り逢ったおっかさんに裏切られ忠太郎は旅人に逆戻り。
帰ってきた娘のお登世は、
「今、家から出て行った人はもしや死んだはずの兄さん!
ねえ捜しに行こうよ、呼びにいこうよ!」
考えてみれりゃ俺も馬鹿よ、幼い時に別れた産みの母は、こう瞼の上下ぴったり合わせ、じっと考えりゃ、優しいおっかさんの面影が浮かんでくらあ・・・
おっかさん!
完